金曜の夜21時。仕事から帰って、風呂を洗って、やっと座った瞬間でした。
拭いたばかりの床に、麦茶が、こう、真横に。
「なんで!!!何回言ったらわかるの!?」
3歳の娘、ビクッ。5歳の息子、無言で雑巾を取りに行く(仏)。夫、Slackを見ている(不在)。
そして娘が寝たあと、私は布団の中で天井を見ながら思うわけです。あんなに怒ることじゃなかった。明日から絶対に怒鳴らない。——翌朝7時、「靴下はく!」で普通に怒鳴っている39歳。
このループ、何年やってるんだろう。そう思っていたときに買ったのが、伊藤徳馬さんの『子どもも自分もラクになる どならない「叱り方」』でした。
結論から言うと、私はこの本を買ってよかったです。でも、絶賛だけ並べる記事は信用できないと思っているタイプなので、まず欠点から書きます。
先に白状します。読んでも私の怒鳴る回数はゼロになっていません
これだけは最初に言わせてください。この本を読んで、私は聖母になっていません。今週も1回はドッカーンしています。
ただ、この本のいいところは、著者さんが最初から「ゼロにしろ」と言ってこないことなんです。カチンときてドッカーンしそうになった状況から、一息ついて冷静な対応に切り替えられたら、それは逆転成功。そういう基準で作られています。
これ、地味にすごい発明だと思っていて。今までの育児本って、読んだあとに「できていない自分」が浮き彫りになる構造だったんですよ。理想の母の写真集を見せられて、はい真似してくださいね、みたいな。で、真似できなくてまた自己嫌悪。
この本は「10回怒鳴ってたのが7回になったら勝ち」の世界観なので、ズボラ勢でも土俵に乗れます。完璧じゃない前提で設計されている育児本、私は初めて読みました。
正直レビュー|買う前に知りたかった、この本の欠点4つ
いいことばかり書いても仕方ないので、実際に読んで「うわ、これは人によっては無理かも」と思った点を4つ挙げます。ここを許せるかどうかで、買う・買わないが決まると思います。
欠点1:声に出して練習する本なので、寝落ち読書には向かない
これが最大の関門です。この本、読み物じゃなくてドリルなんです。「お風呂で走り回る子にどう声をかける?」という場面が出てきて、自分で答えを書いたり口に出したりしてから、解答を見る形式。
つまり、22時に布団で目を半分閉じながらページをめくる、といういつもの読書スタイルが通用しません。私は最初の3日、練習問題を全部すっ飛ばして読み、当然なにも身につかず、初めからやり直しました(アホ)。
ちゃんとやるなら、平日夜に1日10分とか、休日の朝に30分とか、声を出せる時間を確保する必要があります。逆に言うと、そこを覚悟できる人にはめちゃくちゃ効きます。
欠点2:3歳未満のイヤイヤ期には、正直ハマりにくい
この本の方法は、言葉でのやりとりがある程度できる子を前提にしています。目安としてはおおむね3歳以上から。
なので「1歳半のイヤイヤ期が地獄なんです」という方が今すぐ買うと、たぶん物足りません。うちの娘に試したのも3歳になってからで、2歳のころの、床に寝て叫ぶ生物には言葉の技術がほぼ通用しなかった記憶があります。
ただ、書いてある枠組み自体は小学生でも中高生でも使える普遍的なものなので、今2歳の子がいる方は「先に親が練習しておく本」として買っておくのは全然アリだと思っています。
欠点3:専門的な療育やペアトレの「代わり」にはならない
ここ、大事なので正直に書きます。著者さんご自身が、専門機関でやる本格的なペアレントトレーニングを高級乗用車に例えるなら、この講座はママチャリだと言い切っています。
つまりこれは、日常のよくある困りごとに「ほどほどに効く」ことを狙った簡易版。子どものことで本格的に困っていて専門機関にかかっている、あるいはかかろうとしている段階の方が、この1冊で全部解決すると思って買うと期待外れになります。そこは病院や相談機関の領分です。
私は逆に、このママチャリ感が好きでした。相談の予約が3か月先とかで待たされている間、親が今日からできることが1個でもあるだけで、精神衛生がだいぶ違うんですよ。
欠点4:前作『どならない練習』とどっち買うの問題がややこしい
同じ著者さんには前作の『どならない練習』があり、さらに2冊合本版まで存在します。書店で3種類並んでいると普通に混乱します。
私の理解では、前作が基礎編、今回の『叱り方』が実践トレーニング量を増やした練習編に近い立ち位置です。私は今回の『叱り方』だけ買って、それで十分やることがありました。まず1冊ならこちらでいいと思います。
もし気に入って前作も欲しくなったら、そのとき合本版と単品の価格を見比べるのが賢いです(価格は変動するので、購入前にご自身で確認してください)。
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表示日時 2026/09/12 12:37
それでも冷蔵庫に貼っている理由|赤カードと青カードという発明
欠点を4つ並べたうえで、なぜ手放していないか。理由は、赤カードと青カードという言い方が、想像以上に便利だったからです。
イライラして怒鳴る、子どもが反発する、さらに怒鳴る、後悔する。この悪循環を、この本は赤サイクルと呼びます。逆に、落ち着いて具体的に伝えて、できたらほめる、親も子も機嫌がいい状態を青サイクル。
何がいいかって、自分を責める言葉が消えるんです。
以前の私の反省は「私はダメな母親だ」でした。人格の話なので、どうすればいいのか一生わからない。それが今は「あー、今の赤カードだったわ。次は深呼吸から入ろう」になりました。
これ、行動の話なので改善できるんですよ。夫(データ重視の論理派SE)も「それはバグ報告のフォーマットが正しくなったってことだね」と言っていました。うるさいけど合っています。
付録のカードを冷蔵庫に貼っておくと、朝の戦場でチラッと目に入ります。これが効きます。
5つの基本カードを、我が家の地獄シーンに当てはめてみた
本書の土台になるのが5つの基本カードです。うちの実例で書き出してみます。
| 基本カード | 本での意味 | ハルママ家での実際 |
|---|---|---|
| 代わりの行動を教える | 否定形でなく、してほしい行動を具体的に言う | 「走らないで」→「ここは歩いてね」で娘の動きが止まる確率が上がった |
| 一緒にやってみる | ハードルが高い行動に親が伴走する | 「片づけて」→「ママはブロック係やるね」で戦争が終わる |
| 気持ちに理解を示す | 子どもの気持ちを一度受け止めて言葉にする | 「まだ帰りたくないんだよね」を先に言うと、ギャン泣きの音量が下がる |
| 環境をつくる | 距離・視線・刺激を先に調整する | おやつを娘の視界から消す。それだけで交渉が発生しない |
| ほめる | できた事実を具体的に認める | 「靴そろえたね」レベルの当たり前を口に出す |
一番効いたのは、真ん中の「気持ちに理解を示す」でした。これを飛ばして正論をぶつけると、うちの娘は徹底抗戦モードに入ります。先に「わかるよ」を1回入れるだけで、その後の説得コストが半分になる。時間がないワーママにとって、これは時短術です。
カチンときた3秒後に使う「逆転カード」が、地味に神
とはいえ、こちらも人間です。炭酸をこぼされた瞬間に「歩いてね」なんて言える聖人はいません。
そこで出てくるのが逆転カード3枚。待つ(心の中で1〜5を数える)、落ち着く(スーハーする)、聞く・考えさせる(何があったの?次はどうする?と聞く)。
読んだときは正直「深呼吸ね、はいはい」と思いました。すみませんでした、効きます。
理由は本の中で説明されていて、怒りの感情が瞬間的に立ち上がってから、理性を担当する脳の部分が追いつくまでに数秒かかるという話。つまり最初の数秒で口を開くと、ほぼ確実に暴言が出る仕組みになっているらしいんです。私が悪いんじゃなくて、脳の配線がそうなっている。この説明だけで、だいぶ救われました。
なので今は、麦茶がこぼれたら口を閉じて雑巾を取りに行きます。手を動かしている数秒で、なぜか怒りのピークが過ぎている。技術ってすごい。
発達グレーと言われた娘に、この本が合っていたと思う3つの理由
ここからは、うちの家の話です。娘は健診で「もう少し様子を見ましょう」と言われていた時期がありました。今は寝るまで一切しゃべり止まらない女に育っていますが、あの数年は本当に手探りでした。
その時期を通り抜けた私の実感として、この本のやり方はうちの娘には合っていたと思っています。あくまで我が家の話で、お子さんによって違うと思うので、そこは差し引いて読んでください。
「走らないで」より「歩いてね」のほうが、あの子には届いた
娘は否定形の指示が本当に通りませんでした。「投げないで」と言うと、キョトンとして、また投げる。悪気はゼロなんです。
この本の言い方に変えて、してほしい行動をそのまま言うようにしたら、通る回数がはっきり増えました。今振り返ると、うちの子には「やめること」より「やること」を渡すほうが処理しやすかったんだろうなと思います。
キョリ・メセン・シゲキを先にいじると、事故が減る
環境をつくるカードです。これはズボラ勢にこそおすすめしたい。
娘は刺激が多い場所で崩れやすかったので、そもそも視界に入れない、混む時間に行かない、というだけで発生件数が減りました。怒らずに済むいちばん確実な方法は、怒る場面を作らないこと。根性じゃなくて設計で殴る発想が、この本にはあります。
親の自己嫌悪が減ると、子への当たりが柔らかくなる
これが一番大きいです。あの時期の私は常に「私の育て方が悪かったのかな」を抱えていて、その罪悪感が、なぜか子どもへのイライラに変換されていました。
「今日は青カード3回出せた」と数えられるようになってから、自分を殴る回数が減り、そのぶん娘に優しくなりました。子どもを変える本というより、親のメンタルを立て直す本。私はそう受け取っています。
「叱らない育児」とは違うの?論理派SEの夫に突っ込まれた話
この本を読んでいたら、夫が言いました。「それって最近よく聞く叱らない育児でしょ。甘やかして大丈夫なの?」
出た、論点整理おじさん。でもこれ、たしかに多くの人が気になるところだと思います。
私の理解では、この本は叱ることをやめようとは言っていません。やめようと言っているのは、大声を出す、恐怖で従わせる、人格を否定する、といった手段のほうです。ルールや危険を教えるのはむしろ親の仕事として残っている。
実際、代わりの行動を教えるのも、次はどうすればいいか考えさせるのも、しっかり教えているじゃないですか。全部許すのとは全然違います。
なんでもかんでも許容した結果、子どもがルールを学ぶ機会を失うリスクは、確かにあると言われています。この本はそこに落ちない作りになっている。というのを説明したら、夫は「じゃあ手段の最適化か。合理的だね」と納得していました。合理的でよかったですね。
この本が向いている人・たぶん向いてない人
向いている人。怒鳴ったあとに自己嫌悪する人。育児本を読んでも実生活で使えた記憶がない人。3歳以上の子がいる人。声かけを変えたいけど何と言えばいいのか具体例が欲しい人。そして、親である自分を許したい人。
向いていない人。読むだけで身につけたい人(練習しないと意味が薄い本です)。まだ言葉のやりとりが難しい年齢の子だけがいる家庭。専門機関レベルの支援を1冊で代替したい人。あと、そもそも怒鳴ることに悩んでいない人には不要です。
私は、この本を「怒鳴らない母になるための本」ではなく「怒鳴ったあとに立て直す手順書」として使っています。その期待値なら、まず外しません。
紙・Kindle・Audible、ワーママはどれを買うべき?
形式で迷ったら、こう考えてください。
紙をおすすめするのは、書き込みたい人と、付録のカードを冷蔵庫や手帳で使いたい人。この本は練習ドリルなので、正直いちばん機能します。私は紙です。
Kindleが向くのは、家に本を増やしたくない人。ただし書き込み練習はしづらいので、頭の中で答えてからスクロールする形になります。
Audibleは、家事の合間に耳だけ空いている人。皿を洗いながら基本カードを繰り返し聴くと、あの言い回しが勝手に口から出るようになります。声かけの本なので、耳から入れるのは相性がいいと思っています。聴き放題対象かどうかは時期で変わるので、リンク先でご確認ください。

よくある質問
まとめ|怒鳴らない母じゃなく、怒鳴った後に立て直せる母でいい
この本を読んで一番変わったのは、娘ではなく私の寝る前の独り言でした。
「私はダメな母だ」から、「今日のあれは赤カードだったな、明日は深呼吸からいこう」へ。たった1文の違いですが、朝の気分がまるで違います。
怒鳴らない母になんて、たぶん一生なれません。なれなくていいと思っています。カチンときたあとに、5秒だけ黙って雑巾を取りに行ける母。今はそれを目標にしています。
同じループで消耗しているママ友がいたら、こっそり教えてあげたい一冊です。
